インボイス
インボイス時代のインストラクターの処世術③最終版 ~取引先別インボイス後の付き合い方~
免税事業者のままだと取引先が消費税を払い、課税事業者になれば自分が消費税を払う。どうしても対立が生まれやすくなる構造になっています。では、インボイス後の世界ではどのように取引先と付き合っていくべきでしょうか?
筆者のおすすめ
これまで解説してきたように、インストラクターが課税事業者になった場合でも、2割特例および簡易課税制度を利用すれば、納税負担も取引先の経過措置と同様にに軽減され、事務負担もほぼ無視していいほど軽減されます。
1.課税事業者が少ない中、課税事業者になるだけで印象アップ
2.2割特例や簡易課税制度により納税額が少なく済む、また、事務負担もほとんどない
3.免税事業者のままだとしても、結局は減額され金銭的な負担は変わらない
4.今後、取引先が使える経過措置の効力の弱まりに従って、要請も強まり課税事業者の割合も多くなる
5.インボイスの悩みから解放される。インストラクターとしてやるべきことに集中できる
取引先も、インストラクターが課税事業者になれば手取りが少なくなることは承知してます。取引先の要求に従って課税事業者になれば交渉の余地も出てくるのではないでしょうか。
課税事業者になって、報酬の増額交渉をする。
理由
1.課税事業者が少ない中、課税事業者になるだけで印象アップ
2.2割特例や簡易課税制度により納税額が少なく済む、また、事務負担もほとんどない
3.免税事業者のままだとしても、結局は減額され金銭的な負担は変わらない
4.今後、取引先が使える経過措置の効力の弱まりに従って、要請も強まり課税事業者の割合も多くなる
5.インボイスの悩みから解放される。インストラクターとしてやるべきことに集中できる
取引先も、インストラクターが課税事業者になれば手取りが少なくなることは承知してます。取引先の要求に従って課税事業者になれば交渉の余地も出てくるのではないでしょうか。
免税事業者の取引先(既存)との付き合い方(大方針)
すでにインボイス制度が開始した今、筆者が見聞きしている中でも、免税事業者のままでいることを選択した人がほとんどではないでしょうか?
すでのインボイス後の契約条件の交渉も済んだこととは思いますが、ここでは免税事業者のままでいることを選択されたインストラクター向けにあるべき取引先別コミュニケーションの解説を行っていきます。
〇:受け入れる、△:交渉する、×:拒否する(そんなはずはないと説明する)
交渉(△)については、取引先との力関係にもよるのでなんともいえませんが、半分の1%の減額でと言ってみてもよいかもしれません。
拒否する(×)について、まず取引先が免税事業者の場合、取引先は消費税申告を行わないため、インボイス制度は関係がないはずです。また、10%の減額に関して取引先には経過措置が適用されるので最初の3年間であれば2%(2割特例、消費税10%の2割)の減額が妥当となります。
しかしながら、交渉を行っていく中で、売上が大きい取引先、また、説明してもわかってくれない場合、「課税事業者になる」ほうが現実的かもしれません。巷では、「下請法、独占禁止法で禁止されているので訴えることができる」とされていますが、実際に訴えるのは現実な選択肢としてはあまりないと思われます※。
※すべての交渉・取引先について言えることですが、契約を解除されるときに「課税事業者にならなかったから」や「減額に応じなかったから」とは言われないでしょう。「総合的な経営判断」とされてしまえば下請法も独占禁止法も及ばなくなります。
すでのインボイス後の契約条件の交渉も済んだこととは思いますが、ここでは免税事業者のままでいることを選択されたインストラクター向けにあるべき取引先別コミュニケーションの解説を行っていきます。
〇:受け入れる、△:交渉する、×:拒否する(そんなはずはないと説明する)
要望(報酬の減額) | 法人(ジム・スタジオ) | 個人のお客様 | ||
---|---|---|---|---|
課税事業者 | 免税事業者 | 課税事業者 | 免税事業者 | |
なし(そのまま) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
2%の減額 | 〇/△ | × | 〇/△ | × |
10%の減額 | × | × | × | × |
拒否する(×)について、まず取引先が免税事業者の場合、取引先は消費税申告を行わないため、インボイス制度は関係がないはずです。また、10%の減額に関して取引先には経過措置が適用されるので最初の3年間であれば2%(2割特例、消費税10%の2割)の減額が妥当となります。
しかしながら、交渉を行っていく中で、売上が大きい取引先、また、説明してもわかってくれない場合、「課税事業者になる」ほうが現実的かもしれません。巷では、「下請法、独占禁止法で禁止されているので訴えることができる」とされていますが、実際に訴えるのは現実な選択肢としてはあまりないと思われます※。
※すべての交渉・取引先について言えることですが、契約を解除されるときに「課税事業者にならなかったから」や「減額に応じなかったから」とは言われないでしょう。「総合的な経営判断」とされてしまえば下請法も独占禁止法も及ばなくなります。
免税事業者の取引先の新規開拓
オーディションなどで、新規ジムやスタジオなどの新規開拓を行う場合、課税事業者が存在している中では「免税事業者かめんどくさいな」と思わるでしょう。また、契約条件面でも課税事業者に比べて、不利な条件を提示されることを覚悟しましょう。
免税事業者のままでは、新規開拓がしづらく、また、不利な条件での契約を覚悟しましょう。
インストラクターがプロフェッショナルとしてやるべきこと3選
取引先との関係を維持するため、報酬を維持・向上するため、利益を確保するため、本来やるべきことは何でしょうか?少なくとも取引先との消費税の押し付け合いではないはずです。
当初3年間6万円/年、それ以降15万円/年の消費税増税を吸収するために、インストラクターとして本来やるべきことに集中する。
※年間の売上が330万円、課税事業者、2割特例適用、簡易課税制度適用の場合
本来やるべきこと①:インストラクターとしての価値を向上させる
スタジオ経営者にとってのインストラクターの価値は、「人気がある」「レッスンがキャンセル待ちになる」つまり売り上げがアップすることです。またスタジオ運営の手伝いなども行ってもらえればその分人件費が削減できることになります。以下は、長年ヨガスタジオを運営している筆者が考える「インストラクターの価値を向上させる」ための要素です。
Step1:自分の価値を数値化する
例えば、平均的な参加人数をスタジオからヒアリングして、自分のレッスンの参加人数などと比較し、向上させていきましょう。
Step2:お客様のニーズを知る
お客様のニーズは様々です。一人一人の個人のニーズを満たしていきましょう。また、トレンドを把握して、スタジオに提案できるようにしましょう。
Step3:スタジオのニーズを知る
レッスン内外にかかわらず、例えばスタジオ運営にかかわることで、インストラクターでもできることがあれば対応できるようにしておいたほうがよいでしょう。そうすればスタジオの人件費が削減につながり可能性があります。
Step4:ニーズに対応できるよう常に自分を高める
例えば、お客様のニーズにこたえるために食事の知識を身に着けたり、新たにメディカルヨガインストラクターの資格を取得したり、常に自分の価値を高めるために研鑽しましょう。
本来やるべきこと②:取引先を増やす
取引先がひとつだけだと、契約解除された時などにリスクが大きく生活が安定しません。取引先はある程度の数必要です。また、個人のお客様が多く獲得できれば、中抜きされないので単価が高く、それだけ収入も安定することになります。取引先を増やす
インストラクターの価値を向上し続けていられる方は、容易に取引先を増やすことができると思います。
個人のお客様を増やす
最近では、予約システムや顧客管理システム、決済システムなどを安価に利用できるようになっています。
特にオンラインスタジオはすぐにでも始められるのではないでしょうか。
本来やるべきこと③:事業主として、青色申告などを活用・節税を行う。
例えば、青色申告を行うだけで基礎控除が65万円受けられます。所得税、住民税、健康保険税を合わせて30%近くの税率だとすると、これだけで20万円近くの節税効果となります。消費税の納税額をカバーできるかもしれません。複式簿記など、少し難しい部分はありますが、有料の会計システムを利用すればある程度簡単に挑戦できると思います。
-最後に-
全3回にわたって「インボイス時代のインストラクターの処世術」と題して解説してきました。最後までお読みいただきありがとうございます。
Youtubeなどでは、視聴数を稼ぎたい配信者がインストラクター(個人事業主)に耳触りの良い「政府が悪い」「課税事業者になる必要はない」「取引先は下請法・独占禁止法違反になるから免税事業者のままでいいんだ」という論調が多いです。しかしながら、真摯に対応をしないと取引先と関係が悪くなったり、最悪、取引先を失ってしまう事態となってしまいます。
インボイス制度=増税はゆるぎない事実です。皆様におかれましては、インボイス制度の内容をご理解いただき、真摯に賢く対応いただきたいと思います。そうすれば、必ずピンチの次にチャンスが訪れると思います。
Youtubeなどでは、視聴数を稼ぎたい配信者がインストラクター(個人事業主)に耳触りの良い「政府が悪い」「課税事業者になる必要はない」「取引先は下請法・独占禁止法違反になるから免税事業者のままでいいんだ」という論調が多いです。しかしながら、真摯に対応をしないと取引先と関係が悪くなったり、最悪、取引先を失ってしまう事態となってしまいます。
インボイス制度=増税はゆるぎない事実です。皆様におかれましては、インボイス制度の内容をご理解いただき、真摯に賢く対応いただきたいと思います。そうすれば、必ずピンチの次にチャンスが訪れると思います。
「第1回インボイス時代のインストラクターの処世術① ~2割特例と簡易課税制度~」
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「第2回インボイス時代のインストラクターの処世術②~インボイスの発行と消費税申告~」
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2023年09月29日